左側の膨らみを受けるように線を引くと、
スプーンを横から見たようなシルエットになった。
スプーンは、またの呼び名を匙(さじ)という。
匙は、平安時代以前は貝と呼ばれていたものが、
鎌倉時代になって茶道の道具としての茶匙(さし)の
名前を引き継ぐ形で使われるようになったものだという。
その後、同じ用途の道具のの中でも少量をすくうもの全般に
その名称が浸透していったという。
江戸時代になると、医者が薬の調合をする際にも
使われるようになり、特に将軍家や大名の侍医をする
名医のことを、おさじと呼ぶこともあり、
そんなおさじでも治すことを諦める病があり、
そこから、匙を投げるという表現が生まれたようだ。
同時に、患者を生かすも殺すも医者の
匙加減ひとつという表現もここから生まれたわけだが、
実に外科医が主流になる前の時代ならではの
言葉であることがよくわかる。
西洋医学がある程度浸透してきていたら、
メス加減や、メスを投げるになっていたかもしれない。
デザイナーが医者だとすると、
薬の調合で解決できないことがあるように、
デザインで解決できないことも当然あるはずだ。
クライアントによっては不治の病にかかっている
ケースもあり、無理にデザインで解決しようとして
医者の不手際になることもあると考えると、
時には匙を投げることも必要なのだろう。
2015.08.29