WAGOMU-このブログについて-


WAGOMUというのは、「和」と「和む(なごむ)」から創った造語に、「輪ゴム」という括る対象によってその形状を柔軟に変化させることのできる図像の記号性を与えたものです。このブログは、2009年から「瞑想」というキーワードと向き合いながら広告会社でデザインをしている自分から生まれた造形に言語的アプローチで再解釈を与えることを目的に2015年の年頭にはじめました。
実家が、高野山真言宗という密教系の宗派のお寺であることから、美術大学の卒業製作のテーマとして「阿字観」という瞑想に出会いました。密教では阿字(大日如来を表すサンスクリット文字)と対峙しながら瞑想を行います。他の瞑想のスタイルにおいても、何か1つの対象や動作に意識を集中することで、瞑想を体得するものが多いのです。インターネット社会になり、SNSのタイムラインのようにどんどん流れていく情報が増え、多次元的に脳に取り込む情報の量が日々増えていくようになって久しい現代社会において、グラフィックが「瞑想」と同じような効果を人間の脳に与えることができるのではないか。それが私のコンセプトです。
しかし、このテーマを持ちながらデザインをする自分自身が日々の生活や仕事の中での大量の雑多な情報のインプットによって、1つの図像から受け取るインスピレーションの感度や、表現力が劣化しているのではないかという懸念が生まれました。そこで、図像に対しての感度を鈍らせないために、画材を制限したドローイングと、そこから見出した自分自身の思考の軌跡をブログという形で残すことにしました。ブログを書きついでに瞑想しようというわけです。日によっては更新できない日もあるでしょうが、基本的に1日1投稿を目標に続けていきたいと思っています。2015.01.03

2015/06/13

氷割酒 / ON THE ROCK



細かく面取りされ、全体としては
まあるく見える形は、ロックグラスに入れる
ロックアイスに見えてきた。

オンザロックは、ウイスキーなど度数が高く、
薄めずにそのものの味や香りを楽しむお酒を飲むのに
向いた飲み方の1つである。
氷が徐々に溶けていくにつれ、味や風味が変化していくことを
楽しむことができる。
8〜10オンス程度のロックグラスやタンブラーを使用して、
大きめの氷をゴロンと入れたところに、
好みのお酒を注いで、マドラーやバー・スプーンで
混ぜてから楽しむのが一般的だが、
そこに特に厳密なルールがあるわけではなく、
それぞれの趣向で楽しみ方は様々だろう。
ウイスキーをソーダで割って飲むハイボールスタイルが
若年層にも定着した昨今、こういった度数の高いお酒を
オンザロック、あるいはストレートでテイスティングして楽しむ
飲み方にも、更にファンが増えていきそうな感がある。
濃いお酒に抵抗があった人が、ソーダで薄めることで
飲めるようになり、そのお酒自体の独特の香りに慣れる。
気づくと、ウイスキーならウイスキーの別の種類やブレンドとの
違いを、感じて楽しめるようになっていくのではないか。
それは、そのテイストに対する感覚が緩やかに溶けて開いていくようでもある。
そうなると、オンザロックという飲み方は
とても幸せな飲み方であることに気付いてしまうのかもしれない。

見よう見まねでやってみる感覚は、
以外と自分にしっくりこなかったりするものだが、
ゆっくりと時間をかけて溶かして開いていった感覚は、
言葉にし難いほど自分の感覚にスッと馴染むものになるのだろう。
2015.06.13



2015/06/12

神社屋根 / SHRINE ROOF



特徴的な屋根のような図形が描けた。
それは、神社建築に見られる屋根の先端の形に見えてきた。

この屋根の交差した先端部分の形は、
伊勢神宮などの神社建築に代表され、千木(ちぎ)と呼ばれる。
元は、屋根を建造する際に木材2本を交叉させて結びつけ、
先端を切り揃えずにそのままにした名残りだという。
この部分は、鰹木という水平に置かれる部材とともに、
本来は建物の補強のために造られたのが始まりのようだ。
今では、置千木といって、屋根のに飛び出た千木の部分だけを
装飾として置くことも多くあるようだ。
また、千木は祀られているのが男神の場合と女神の場合で
先端の削ぎ方が違っているという。
男神の場合は外削ぎ(先端が地面に対し垂直になるように削ぐ)、
女神の場合は内削ぎ(水平に削る)といった処理が施される。
基本はそのようになっていつつ、
伊勢神宮においては内宮と外宮で両方女神を祀っているが、
内宮は内削ぎ10本、外宮は外削ぎ9本が建築に施されているそうだ。
おそらく、物理的な性別で分けられた男女神の違いではなく、
概念的な性質や、内と外のバランスなど、
それ以外の要素も相まってこの構成になっているのではないかと思う。
以外と形式的には割り振れない世界がそこにはありそうだ。

古来から建築物の一部に、こういった形で
ある記号的な意味が込められてきたことを考えると、
そこには明らかに、未来へのメッセージが込められていたと
考えるのが妥当ではないだろうか。
2015.06.12





2015/06/11

箸礼儀 / CHOPSTICKS MANNERS



2本の線をサッと引くと、
箸置きに置いた箸のようになった。

箸はテーブルに直置きするよりも、
箸置きに置いた方が丁寧な感じがして嬉しいものだ。
一般的に日本の箸は片方の先が細くなっている。
これは、魚の細かい骨を摘むためにこうなったという由来は知らなかった。
また、箸の先端の形状の処理にもいろいろあり、
祝い箸などは両端が細くなっている。
置き方も、国によっての違いがあり、
中国では先端を奥に向けて、日本とは垂直に交わる角度で置くようである。
また、日本において箸の用途として最も特異な例として
火葬した遺骨を骨壷へ移す際の使用がある。
この時に使用する箸は骨箸と呼ばれ、
それぞれ長さの違う竹と木でできた特別なものである。
その箸を使い、参列者どうしで、箸から箸へと遺骨を
受け渡していく儀式がある。
この特異な使用例の存在によって、
日本の箸マナーとして、長さや材質の違う箸を組み合わせては
いけないことや、箸から箸へ食べ物を受け渡しては
いけないということが生まれてきたと考えられている。

また、箸置きには口に運ぶ方の先端を置くのが基本であるが、
別名箸枕と言われるように、ときどき箸が人に見えて
枕に頭を乗せて横たわっているようにも見えてくるのである。
そのままそっと布団をかけてあげたくなるのは私だけであろうか。
2015.06.11


2015/06/10

蚊取線香 / MOSQUITO COIL



そろそろ蚊の季節だと思いながら
渦を描いていると、それは蚊取線香にしか
見えなくなってきた。

香取線香は、線香に除虫菊(シロバナムシヨケギク)
の成分を練りこんだものを言う。
ピレトリンやピレスロイドと呼ばれる成分が、
殺虫効果があり、一般的にこの用途でしようされるようになったそうだ。
てっきり、蚊取線香の煙によって殺虫すると思っていたが、
実際には燃焼部分の手前で高温により揮発する
科学物質(ピレスロイド)に殺虫成分があるようだ。
これだけ渦巻きのイメージが強い香取線香だが、
大日本除虫菊の創業者、上山英一郎氏は
当初は棒状の蚊取線香に除虫菊を練り込んだものを考案するが、
棒状のため、燃焼時間が短いのが難点であったそうだ。
現在一般的に流通している渦巻き型の蚊取線香が
出来上がったのは1895年であり、
これは上山氏の妻の発案であったという。
燃焼時間を長くさせる画期的なアイデアを出したのが
上山氏の妻だったということには、正直驚いた。
そんな渦巻きの蚊取線香は解きほぐすと75cmあり、
燃焼時間は約7時間で、人間の睡眠時間に合わせられている。

我々の生活の中には、渦巻きの記号が結構いろいろ溢れている。
その中でも蚊取線香は、知名度とそのデザインとしての
完成度といった観点から、「ベスト・オブ・渦巻」と言っても
過言ではないのかもしれない。
2015.06.10



2015/06/09

紙垂 / SHIDE



ジグザクに並んだ白い矩形は、
神社の木に巻かれた注連縄に垂れ下がる
紙垂のようだった。

「しで」という言葉は、「垂づ(しづ)」の連用形で、
「しだれる」と同根であるという。
4枚一組で垂らすのが基本だからか、
別名「四手」とも呼ばれるらしい。
祈りを支える神具としてデザインされているものだが、
その形は稲妻の形に非常に似ているのだ。
昔から、稲妻が落ちると稲が育って豊作になったことから
雷光、稲妻をイメージしたフォルムになり、
邪悪なものを追い払ったと考えられている。
こういった神具の形状ひとつとっても
そこにかなりの見立てが入っていることもわかる。
知らなかったのだが、紙垂の背景にある注連縄は
雷雲の形を模していて、そこから稲妻が落ちる様に
見立てたものだったという。
信仰の裏側にあるこういった見立ての記号性は、
時にかなり具体物の形状を模していることがある。
やはり当時はまだ偶像崇拝の名残が強かったことも
関係しているのかもしれない。

神具など、特に信仰の対象になり得るものは、
紙垂をはじめ、神鏡など、かなり分かりやすい
形を模しているものが多いように思う。
神鏡などはおそらく太陽か月をモチーフにしていることは、
あえて言うまでもないのだろう。
2015.06.09


2015/06/08

魚卵 / IKRA



丸の中に丸を描くと、
軍艦巻きの上で輝きを放っている
イクラの粒に見えてきた。

日本では、イクラというと
鮭や鱒の卵を指し、筋子の状態から
バラした状態を言うことがほとんどである。
ただ、IKRAは元々はロシア語で
魚卵の意味であり、キャビアなども含めた
魚類の卵全般を指すものであるそうだ。
当時、筋子とどう区別したらいいか分からなかった
日本人が、来日していたロシア人が
これをイクラと呼んでいるのを見て
そのまま呼ぶようになったらしい。
イクラには、食感も味も見事に再現された
人造イクラが存在するが、実は人造の方が
生産コストがかかるようで、
市場に多く出回っているという噂はデマのようだ。
また、イクラに限らず魚卵の類は、
非常にコレステロールが高く、痛風などの
持病を持つ方は、プリン体が多いから
医者から控えるようにと注意されることもある。

個人的には、イクラをあまり好んで
食べないのだが、健康に響くとあれば
高尿酸値で痛風予備軍の私としては、
この小さな爆弾に怯えずにはいられない。
2015.06.08


2015/06/07

凸凹 / BUMPY



凹型が描けたので、
凸型をガッツリはめ込んでみると
2つで1つの形になった。

この世には凸と凹のように
対になる記号性で、足すと1つにまとまるものが沢山ある。
言語の世界においては、こういった対義語はANTONYMと呼ばれ、
言語に普遍的に見られる意味構造で、
特にペア(対)になるものを指す。
その中でも、一方を否定すると他方になるものがあり、
凸凹もその1つであり、特に強い記号性を持っている。
+と−、山と海、男と女、生と死、
などが同じ仲間と考えられるが、
対でもあり、元はひとつであったとも解釈できるのではないか。
こういった対義語は我々の想像力をとてもよく刺激してくれる。
物事を考える時の俯瞰的な視点を与えてくれたり、
小さなことを気にしないで済むようになったりする
きっかけを与えてくれる側面があると思う。
このANTONYMの解釈を記号的に解いていくことは、
思考の瞑想にも近いのではないか。

ただ、拡大解釈や誇大妄想といったように
この解釈がネガティブに作用することもあることも事実である。
きっと、迷走しない程度に瞑想とうまく付き合っていく位が
丁度いいのではないかと思うのである。
2015.06.07