勢いまかせに引かれた5本の線の塊だが、
先端のシルエットが人の横顔にも見えなくもない。
具体的ではないのだが、風や勢いを感じるこの図像を
風神に見立ててみることにした。
より風を巻き起こしている感を出すために、
背景にはシルエットにクロスする角度でストライプを配した。
風神は、世界中の神話に出てくる神だが、
日本では、イザナギとイザナミの間に生まれた級長津彦命(シナツヒコノミコト)が
風の神に当たると古事記や日本書紀に記されている。
神様として祀られる他にも、妖怪として空気の流動が農作物や漁業に影響を与えたり、
人間の体内に入って風邪の元になるなどと恐れられていた。
絵画の中では、俵屋宗達の風神雷神図屏風のように、
風の入った袋を持っているふうに描かれることが多い。
また、ギリシア神話では東西南北の風の神をまとめて
ANEMOI(アネモイ:古代ギリシア語)と呼ばれ、それぞれが
季節や天候に関連付けられていたという。
表現のされ方も日本とは違い、
あるときは一陣の突風として表現され、またあるときは
翼の生えた人間として擬人化されるという。
どちらに関しても言えるのは、風が我々に与える影響は大きく、
神格化されるほどのものであったということだ。
近年の異常気象は、エルニーニョ現象によって引き起こされた
偏西風の蛇行が原因であるという説があるが、
偏西風はおそらく地球最大規模の風の流れであり、
地球上で生きる我々に確実に大きな影響を与えている存在だ。
それは、風神と呼ぶのにふさわしいものかもしれない。
2015.02.14