コロッとしたフォルムにT字型の亀裂が入っている。
それは、カブトムシやてんとう虫などのいわゆる甲虫類のようだ。
甲虫類は幼虫の時はイモムシのようなブヨブヨとしたシルエットだったものが、
完全変態の過程で蛹を経ることで硬い外骨格に守られた形に変容する。
その進化の過程は、ドラゴンボールのセルのようにまったく以前の形態の
名残を残さない面白いものである。
また、彼らの一生は樹木と近い所にあり、
樹液を吸って生きるものが多いように思う。
甲虫という言葉を英訳するとどうなるのかと思い、
調べてみるとどうやらBEETLEというらしい。
てっきり僕はBEETLEはカブトムシのことだと思っていた。
BEETLEといえばフォルクスワーゲンの定番モデルだが、
まさにあれは甲虫類の形をモチーフにしたデザインだったのだ。
勝手にカブトムシなのになんでツノがないのと思っていた自分が恥ずかしい。
よくよく考えればカブトムシを漢字にすると甲虫だった。
話は変わるが、BEETLEの広告表現は
今でもお手本にされるほどの、ミニマル表現の極みである。
有名な'Lemon.'や'Think small.'のキャッチフレーズなどは、
見るものの想像力を掻き立てる表現のお手本である。
車自体のフォルムやレイアウトの余白によって魅せる表現の原点とも言える。
その表現が生まれた背景には、甲虫という自然界の生き物に立ち返って
開発された車のデザインが持つ、強い思想があったのではないかと思う。
2015.02.12
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