波打った線を何本も描いていると、
海老の切り身の開いた背中の部分に見えてきたので、
尻尾を1尾くっつけた。魚拓ではなく、蝦拓である。
和語の「えび」はもともと葡萄、あるいはその色の
ことだったようで、いまでも葡萄色と書いて、えびいろと
読むことがあるようである。
しかし、個人的には海老が葡萄の色をしているということに
まったくピンとこなかった。
どちらかというと蝦といえば紅と白といったイメージが強い。
それは、我々が蝦と対面する頻度が最も高いのが
食卓で、料理として手が加わった蝦と対面することが
ほとんどであることを意味している。
蝦の透明な身は、熱湯などで熱すると真っ白になる。
殻やそれに付随する部分は紅くなる。
おそらく食卓に上がる蝦は
加熱処理されている確率が高いため、
おのずとそのイメージが強いのだろう。
蝦の記号性は、食文化の発展とともに
葡萄から蝦拓に見られるようなイメージに
変わってきたのではないか。
もうひとつ仮説として考えられるのは、
産卵期の蝦のメスの腹部には、
それこそ葡萄のような大量の卵が付いている。
その姿は、沖縄料理に出てくる海葡萄にそっくりだ。
蝦が葡萄と呼ばれた所以は、ひょっとすると
そんなところにあるのかもしれない。
2015.07.04