半月型の図形に、半月型の輪郭。
それは日本の伝統的な家屋の中心にあった
囲炉裏に吊るされる鍋のようだった。
囲炉裏は、薪や炭火などで火を熾すために
床を四角く切って灰を敷き詰めたものである。
その用途は多岐にわたり、
暖を取るため、調理のため、照明として、
室内の乾燥のため、火種として、また、
木造建築ならではのことであるが、
囲炉裏で火を焚くことによって、
暖かい空気が充満して家屋の木材の水分が飛び
腐食しづらくなったりもするようだ。
また、煙に含まれるタールが茅葺屋根や藁屋根の
防虫性や防水性を高めるという。
もう1つの忘れてはならない役割が、
家族の団欒の中心的役割を果たしていたことである。
現代の生活スタイルでは、西欧流にテーブルを囲んだり、
食卓とは別にリビングという空間がある。
キッチンは完全に別の場所になるため、火を囲むという
スタイルが完全になくなったのが最も大きな変化だろう。
日本独自の炬燵だけは、少し囲炉裏のスタイルを
受け継いでいる部分があるのかもしれない。
木造建築だからこそ生まれてきた生活スタイルと
それを維持するための工夫の数々は非常に興味深く、
おそらく我々日本人のDNAに原風景の記憶として埋め込まれていると考えられる。
現在でも、焚き火を囲んだり、鍋を囲んでつつくことを
時々やりたくなってしまうのは、そんなDNAの仕業なのだろうか。
2015.06.06