二股に分かれた図形は、
ひらひらと舞う前掛けのようだった。
二つの円を重ね合わせると、
赤ん坊のおもちゃとしても親しみ深い
起上小法師のシルエットになった。
起上小法師は、元は福島県会津地方の郷土玩具である。
何度倒しても起き上がることから、
七転八起の精神を含有している。
これがどのようにして赤ん坊のおもちゃとして
親しまれるようになったのかは分からないが、
赤ん坊と同じように頭の大きな2頭身に近いシルエットが、
赤ん坊の等身大の遊び相手にちょうど良かったらからなのではないかと思う。
ぶつかったり押したりすると、玩具の中心に仕込まれた重りが、
自動的に赤ん坊のお守りをしてくれることで、
赤ん坊の丁度いい遊び相手になってくれる。
そして、赤ん坊用の起上小法師は音がなる。
動きに合わせてカランコロンという音がなって赤ん坊を飽きさせない。
赤ん坊のインサイトをついた、
かなり考えられている玩具であると改めて思った。
赤ん坊に自意識が生まれて、相手のリアクションに
感情が込もっていないことが気になり始めるまでの間は、
十分にその役割を全うできるだろう。
こういった単純な仕組みの道具は、
感情を含まず、まるで呼吸するようにその機能を果たす。
生きるためには呼吸をしなくてはならないように、
赤ん坊にとって遊ぶという行為は、
最初は呼吸することとほぼ同じようなことなのかもしれない。
そこに自意識が芽生える瞬間まで、
自分にちょうど良い生のリズムを探るかのように、
起上小法師に対して暖簾に腕押しを続けるのだろう。
2015.04.11