二股に分かれたシンメトリーな図形を描くと、
鋏(はさみ)のようになったので、
1本の線を刃の間に挟んでみた。
鋏の歴史は古代エジプトまで遡り、
紀元前1世紀の古代に使われたものも出土している。
もとは医療用や羊毛の収穫に使われていて、
いまの鋏にはない、握り鋏という形状のものであったという。
日本には6世紀に中国経由で伝わったとされ、
江戸時代に入って次第に量産されるようになり、
衣服の洋装化に合わせて生地を自由に切る目的で、
更に明治時代に及したという。
言わずもがなだが、鋏はてこの原理を利用して
小さな力で様々なものを切れるように設計されている。
基本は、支点・力点・作用点の3点の働きで、
そこに緻密に計算された「ひねり」と「スキ」を
加えることで、芸術性すら帯びた切れ味を
持つまでに至ったようだ。
結果的に、海外から見ても日本の金物職人の技術の結晶の
代表格と言えるほどの存在になったのは、
日本人が好むミニマルな発想とのマッチングが
あったからではないか。
元は同じ原理を利用した道具だったものが、
日本人の視点や技術を通すことで独自の輝きを持つ例は、
鋏以外にも沢山ある。
日本はある意味、荒削りだった技術の不純物を取り除いて
純度を上げてしまう技術の濾過装置のような所がある。
2015.08.28
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