細い線を束状に描くと、
指で摘んだ若い松の芽のシルエットのようになった。
盆栽をやるような人にとっては、
松の芽摘みは毎年恒例のことかもしれないが、
松脂が手にベトベトとまとわりついて、
お世辞でも快適とは言えない作業である。
松脂といえば、高校時代にハンドボール部の連中が
滑り止めのために手に塗っていたのを思い出すが、
よくもあんなにベトベトしたものを塗るものだ。
松脂の成分は油溶性があるらしく石鹸で洗えばきれいに
落とせるが、それでも進んで触りたいとは思わない触感だ。
その成分がゴムや粘着剤の原料になることは知っていたが、
我々がよく噛んでいるチューインガムの
噛み粕になるガムベースと呼ばれる部分の原料として
この松脂の中に含まれるロジンという成分が
使われることもあるというのだ。
もちろん松脂そのままではなく、変成したものが
ガムベースなるということだが、
あの噛んでも噛んでもなくならない独特の歯触りは、
確かにどこか共通するものがあると言えばあるかもしれない。
ガムを噛んだままスナック菓子を食べると
なぜかガムが溶けて柔らかくなる感覚が面白くて
子供の頃によく実験していたことがあるが、
油溶性がある成分だからそうなっていたということが解り、
子供時代の不思議が1つ解けたような気がして少し嬉しかった。
それにしても、松脂のような手に余る素材でも、
有効活用しようとした先人の知恵に頭が下がる話である。
2015.08.21
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