ドーム型のシルエットに、
取っ手のようなアーチと、横に突き出た棒を生やすと
熱々に沸騰する薬缶のように見えてきた。
薬缶の語源は、薬を煮出すために用いられたことから
薬鑵(やくくわん)と呼ばれていたことに由来し、
そこから音が転じてやかんになったという。
鑵(くわん)というのは水を汲む器が原義で、
薬缶という漢字は当て字で、やかんと呼ばれるように
なった後に当てられたようである。
日本には、薬缶と同じような形状をしている
土瓶という食器が存在する。
用途はほとんど同じであり、こちらのほうがむしろ
薬缶よりも先に日本の生活には馴染んでいたと言える。
お茶を飲むために、湯を沸かしたりする用途としては
おそらくこちらのほうが丁度良かったのではないか。
しかしその後、金属製の薬缶が一般化したり、
その他の機能性に長けた容器が出てくるにつれて、
土瓶の使用頻度は徐々に下がり、
日常で使われる日本の食器の中から
姿を消していくことになったのだろう。
薬缶(ケトル)は西欧文化の流入と共に、
土瓶という日本の陶磁器文化に取って代わったとも言える。
最近では、日本独自の家具や生活様式を見直す傾向があるため、
あえて薬缶ではなく土瓶を選択する人も増えているように思う。
薬缶は沸かす湯の量によってはとても重宝するが、
それ以上に生活の質を求めるようであれば、
昔から手に馴染んだ土瓶を検討してみるのも悪くないだろう。
日本人の薬缶熱は徐々に冷め始めているのかもしれない。
2015.07.17
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