楕円形の上に高さのある四角を描くと、
ハットの中でも燕尾服などの正装時に
着用されることの多いシルクハットのような形になった。
大抵黒が多いシルクハットでだが、これは白い。
白の帽子というのは日常的に着こなすのがなかなか難しいと
思われてか、黒いものに比べて目にする機会が少ない。
白馬の王子様や、怪盗キッド(名探偵コナン出演)の格好は、
白のシルクハットにマントに正装という、
ある意味この上なく理想化されたものである。
帽子なしであれば、結婚式で新郎が着ていることも時々ある。
白い衣装というのは、どこか特別な扱いをされることが何故か多い。
日本でも、白装束と呼ばれる衣装があり、
神事において神主や巫女、修験者が身につける全身白ずくめの
浴衣のような衣装のことである。
また、死者に着せる衣装は基本的に白であり、
死装束、経帷子と呼ばれるものがある。
今でこそ黒が主流になった喪服も、日本では古くは
白喪服が主流だったと言われているようだ。
白は穢れのない色として、未亡人が身につけた場合に
再婚はしない意思を表明するものだという。
かつての日本の女性は、婚礼で着用した白無垢を
ずっと保管しておいて、愛する連れ合いがこの世を去った際に
袖を詰めてそのまま喪服にしたというのには驚かされた。
現在の黒い喪服が主流になったきっかけには、
どうやら少し黒い歴史が影響しているようだ。
理想化された白、神格化された白、意思表明としての白
といったように、日本人は白という色に、色の代わりに
様々な意味付けを施して身に着けてきたのだろう。
白という色のもつ記号は、無であり無限と言えるのかもしれない。
そう考えると、白い正装を着こなすことは、
そうそう簡単ではない気もしてくる。
2015.06.19
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