2つの隆起した形は、
山の尾根に積もった雪のように見えた。
雪を受け止めるように三角形を配すると、
それはまさに雪化粧をした山の姿になった。
京都の舞子さんなどがする白粉(おしろい)という化粧がある。
現代では違和感しかないその真っ白に塗り替えられた女性の顔は、
本来の顔の個性がなくなるどころか、むしろ怖い印象すら抱く。
元々白粉は、平安時代からの慣習とされるが、
男性が夜に女性に会いに行った際に、灯りの弱い暗い部屋の中でも
よく顔が見えるようにするために始まったものである。
理屈は理解できるが、当時そんなに灯りが弱かったとするならば、
暗闇に浮かび上がったその顔は、実に不気味なものだったのではないかとも思う。
おそらく、当時の男性の感覚では、その漆黒の暗闇に浮かび上がる
ぼんやりと白い女性の肌を美しいと感じる感性があったと考えられる。
谷崎潤一郎の陰影礼賛にあるように、
日本人は陰影の中に美を見出すことのできる感性を持っているとすると、
現代的な感覚でいう、暗い、怖いという感覚が、
当時は美の感覚に強く繋がっていたということになる。
話しは戻るが、雪化粧というのは山にとっては白粉みたいなもので、
移り行く日の光の表情の中で我々は、
その山の白さに心動かされているうちは、
まだ大丈夫なのかもしれない。
2015.03.05
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