柱状にそそり立った荒々しい線は、
何やら穏やかではない様相をしている。
噴水のようにも見えたが、公園の真ん中で穏やかに水を吹き上げるそれよりは
大地の割れ目から吹き出すような勢いを感じたので、
青い地球の表面と、真っ赤な大地の裂け目を足してみた。
ここ数日間は、非常に辛く悲しいニュースが日本に届く日々だった。
非人道的なテロ集団による日本人ジャーナリストの拘束から身代金要求、
そして最悪の結果である人質殺害という結果になった今回の出来事の過程で、
国の代表の口から「憤り」の類の言葉が何度も発せられた。
テロ行為が許してはならないことであるのは大前提として、
これを見て感じたことがある。過去の歴史を見ても、
人間の「怒り」や「憎しみ」は、いい結果を生んだことはない。
それを国の代表として発言することは、好ましくないと思った。
たとえどんなに人が憤ろうとも、地球の憤りに対しては
無力であることを忘れないほうがいい。
大地が裂けて地球の憤りが吹き出してきた時には、
きっと抵抗することすらできないのだから。
そんなことを考えていた時に偶然、NHKで写真家のセバスチャン・サルガドの
TEDでのプレゼンテーションを見てさらにその思いを強くした。
先に書いたようなことは、サルガドの生涯からも十分に学ぶことができる。
彼はブラジル生まれの報道写真家で、人間の尊厳をテーマに
難民などの多くの写真を撮影してきた。ところが、ルワンダで1日に何千人もの人間が
殺されるのを見て立ち直れないほどのショックを受け、故郷のブラジルに戻った。
すると、彼が生まれた頃は土地の50%あった熱帯雨林が、
この時0.5%まで減少していた。ただならぬ思いで実家の土地を受け継ぎ
妻と一緒に森林の再生に取り組み始め、木を植える活動を始めた。
そこでの自然との関わりの中で写真を撮る意欲を取り戻し、
残すべき地球の姿をテーマにまた写真を撮り始めることになる。
美しくも厳しい地球の自然と生き物の姿を捉えた作品群を発表した後、
続けていたブラジルの森林再生に戻り、今では200万本の木を植えその土地の森林を
再生させたというのだ。彼は今も、森林再生の活動を勢力的に行っている。
人間を追いかけた先に絶望し、森に救われ、地球の声に耳を傾けるようになったのか。
彼のように、極限を経験した人間が気付くことにこそ、価値のある学びがある。
彼は、経済活動の重要性などは当然理解したうえで彼の生き方を選択している。
国を守る使命は非常に重い任務であると思うが、
こんな局面に立たされた時にこそ、自分の立っている足元から
想像力を膨らますことを大事にしてもらいたいと思う。
そして同時に、僕自身のことも省みざるをえない。
2015.02.01
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