下から上へ包み込むように半円を描くと、
1輪の菊の花のようなシルエットになった。
菊の花と言ってもいろいろある。
色もイエローやピンク、ライムグリーンのものもあり、
形状も大輪で1輪咲きの大菊をはじめ、スプレー菊と呼ばれる
小ぶりの花がたくさんついたタイプもある。
ただ、日本では菊の花というのは完全に弔事用や仏花といった
イメージが定着している。
その中でも白い菊というのは、葬祭場で用いられたり、
仏様へのお供えとしての役割を一手に担う特別な存在になっている。
間違えて白い菊の花を相手にプレゼントにしてしまうようなことがあれば、
相手にとってはとても失礼で気分を害すことになるのは、
日本人であれば大体の人が感覚的に理解していることだろう。
しかし、その記号性も最初から固まっていたわけではないようだ。
もともと菊の花が持っている意味合いに、
「邪気払い」「無病息災」「延命長寿」というものがあったり、
皇室の紋章のモチーフになるなど、気品漂う格式高い花なのである。
そこに、日本古来から弔いの色とされてきた白が合わさったことで、
その後の白菊のあり様が決まってきたのだろう。
今でこそ弔事のイメージは黒であるが、
もともとの白の意味合いを真っ黒に塗り変わったのは、
キリスト教が葬儀で黒い衣装を身にまとうようになってからという説がある。
亡くなった人に着せる死装束が白であるように、本来的には日本人は
白い色に次の世界への旅立ちという意味を与えてきたのだ。
もし、黒い菊の花が存在したら日本の葬儀が真っ黒なイメージに
なっていた可能性もあるのかもしれない。
しかしながら、葬儀の色彩が黒に染まった今でも、
弔辞や仏花に白い菊の花を用いるという慣習は、
そんな日本人の白に対する感覚の貴重な生き残りなのかもしれない。
2015.06.22
0 件のコメント:
コメントを投稿