立方体は、8つの頂点からなる立体である。
それがぐにゃっと歪んだような構成になったこの形は
寒天のように柔らかい立方体に見えた。
立体物をワイヤーフレームで表現した図像には、
なぜか独特の魅力がある。
それは、量感ではなく、三次元上の空間構成でその存在を
認識できるからかもしれない。またそこに、
物質としての質感ではなく、
線の質感という情報を追加することができる。
その線は、その形の硬さやスケール感まで情報として含んでいる。
また、内側を透視できる点も、線ならではである。
本来ならば見えない向こう側の線を再現することで、
視点とは反対側の形まで情報として伝達することができる。
質感で言っても、向こう側が見えるということは、
その対象が透明なものであるという情報にもなる。
そして、曖昧になった内と外という概念が、
見るものの視点を引き込むきっかけのひとつにもなる。
その感覚は、西洋の建築と昔の日本家屋との特徴の差にも見られる。
昔の日本の家は境界があいまいで、外の空間が中に入り込んだり、
家の中の空間が外に張り出したりしていた。
縁側や土間といった空間に、その内外の曖昧さの美徳を感じて
取ることができるのではないか。
縁側は玄関を通さずに、気を使わない接客をする場として活用され、
土間は家の空間内部の縁を切る役割を果たし、
外から持ち込む土のついたものはここに置き、
作業場として活用されていたようだ。
こういった感覚が日本人のどこかに残っているとすると、
線で描かれた立体に、どこか魅力を感じることも
納得できる材料のひとつなのかもしれない。
2015.03.10
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