斜線で描いた格子模様の真ん中に、
どっしりと点を置いてみた。
最初はなんだか目玉みたいだと思っていたが、
しばらくするとこれが、漢字の「丼」の字にしか見えなくなってきた。
僕は丼ものが好きである。
暖かい白飯の上に様々なおかずをドンと乗せただけの
シンプルな食べ物だが、それは十分に食欲を満たしてくれる。
安い食ゆえの楽しみがそこにはあると思う。早い安い旨いの魅力だろう。
「どん」という読みの由来は、字の成り立ちからも分かるように
井戸の中に落ちた物が水面で発する音に由来するらしく、
丼という漢字の形もまた井戸に物を投げ込む様子を表すようだ。
また、語源的な由来を辿ると、江戸時代の倹飩屋(慳貪屋)に
端を発し、上下左右に溝があって取り外し可能な蓋のあるけんどん箱や
無愛想やケチであることを表すところから来ている。
そう考えると、「丼」という記号はシニフィアンとシニフィエが
割と一致している図像であると言えるのではないか。
その記号としての佇まいからも、様々なイメージが交差し
集約されたような印象すら感じる。
我々が、机の上にドンと出された丼から目を背けることなく、
おかずと白飯を夢中で口に運ぶのには、
この「丼」の持つ強い記号性が無意識に働いているのかもしれないと思い、
さて次は何丼を食べようかと考えるのである。
2015.03.22
0 件のコメント:
コメントを投稿