なるべく規則的に手で描いた格子模様と、
規則的にパソコンで描いた格子模様を重ね合わせた。
残念ながら僕のフリーハンドにそこまでの正確性はなく
見事にパソコンで描いた格子との質感の対比が生まれた。
どうやら手で描いた格子は、格子窓に積もってへばりついた雪のようだ。
少し時間が経ってずり落ちたようにも見えて味わい深い。
縦縞と横縞の交差からなるパターンは幾何学模様の基本模様のひとつ、チェック柄である。
日本のチェック柄というと、市松模様や、千鳥格子がある。
こういった文様は、その名前の由来が興味深いことが多い。
市松模様の名前は江戸中期に歌舞伎役者の佐野川市松が舞台衣装の袴に用いて以来、
その呼び名になったという説がある。歌舞伎役者の名前がつく模様など、なかなか粋である。
日本には、歌舞伎と能という2つの世界に誇れる伝統芸能がある。
この2つは根本的に大きな違いがある。
歌舞伎は江戸時代に庶民も楽しめる芸能として、広く大衆向けに生まれたもの。
それに対し能は室町時代に特権階級の貴族のために生まれた芸能である。
一説によると、能の舞台を見た貴族は自分の権力や財力を示すために
次の舞台で能楽師が身につけるための装束を与えたそうです。
舞台を見た他の貴族に馬鹿にされてはならないと、見えない裏地まで
豪華な文様が敷き詰められたようです。
おそらく、シルク製の最高級の織物だったのでしょうが、
織物は縦糸と横糸が垂直に交差することで形成されることがほとんどのため、
方眼形式の蚊図と呼ばれる設計図が使用されているそうです。
表面に現れてくる美しい図像のパターンも、
この縦横の糸の組み合わせから成るものだと考えると非常に味わい深いものがある。
伝統芸能を支える伝統技術という、替わりのない関係がそこにはある。
2015.01.11
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